【2026年版】CRS情報275万件時代の海外資産ヒアリング術

「海外に口座なんてありませんよ」――確定申告の面談でこう言われて、そのまま流していないでしょうか。国税庁が公表した「令和6事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要」によると、外国税務当局から受領した日本居住者のCRS情報(非居住者金融口座情報)は約275万件、口座残高の合計は約17.7兆円に達しましたhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。顧問先の海外口座は、税務当局には「すでに見えている」前提で考えるべき時代です。本稿では、この公表データを読み解いたうえで、会計事務所が海外資産の確認漏れを防ぐための「ヒアリングシート化」による効率化の進め方を整理します。

令和6事務年度の情報交換事績を読む

国税庁の公表資料によれば、令和6事務年度にCRSに基づき外国税務当局から受領した日本居住者の金融口座情報は2,745,374件で、前事務年度(2,455,288件)比111.8%と過去最多を更新しました。情報交換を実施した相手は101か国・地域に上りますhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。
内訳を見ると、個人口座が約272万件・残高約9.6兆円、法人口座が約3万件・残高約8.1兆円。件数では個人が圧倒的ですが、残高ベースでは法人口座も個人に匹敵する規模ですhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。地域別ではアジア・大洋州からの受領が1,858,808件と全体の7割近くを占めており、香港・シンガポールなど顧問先の取引が多いエリアがそのまま情報交換の主戦場になっている印象を受けますhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。
CRS以外の数字も見逃せません。法定調書により把握した非居住者への支払情報(利子・配当・不動産賃借料・使用料等)の外国当局への提供は920,649件で前年比122.65%と大きく伸びました。また、外国税務当局から日本への「要請に基づく情報交換」は326件と、前年の202件から約1.6倍に増えていますhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。国境をまたぐ資料のやり取りは、双方向で確実に活発化しているわけです。

調査はこう始まる――公表された活用事例

同資料には、CRS情報を端緒とした調査事例も掲載されています。X国から受領したCRS情報により、会社員AがX国内の証券口座で配当等の収入を得ていることを把握。この財産に関する申告も国外財産調書の提出もなかったことから調査に着手し、本人が資料提出に応じなかったため、X国税務当局への情報提供要請で取引明細書等を入手し、配当所得と株式譲渡所得を算定して課税した――という流れですhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。
注目すべきは「国外財産調書の提出がないこと」が調査着手の判断材料になっている点でしょう。国外財産調書は、その年の12月31日時点で合計5,000万円を超える国外財産を保有する居住者に、翌年6月30日までの提出が義務付けられており、提出の有無によって過少申告加算税等が軽減または加重される措置もあります
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁
。CRS情報と調書の突合は、当局にとって最も費用対効果の高いスクリーニングなのだと思います。

効率化の要は「海外資産ヒアリングシート」

ここからが本題です。私たち会計事務所側の実務では、海外資産の把握が担当者の「聞き忘れ」に左右されがちです。属人化を防ぐには、確認項目を定型化したヒアリングシートを作り、年間業務に組み込んでしまうのが一番の近道だと考えています。

確認項目の標準化

シートに載せるべき項目はそれほど多くありません。具体的には、海外の預金口座・証券口座の有無、海外の暗号資産取引所の利用、国外不動産や外国保険契約の保有、海外勤務歴や家族の海外居住といったところです。そのうえで、12月31日時点の国外財産合計が5,000万円を超えそうな顧問先には、国外財産調書の提出義務(翌年6月30日期限)を必ず案内する欄を設けておきます
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

年間スケジュールへの組み込み

運用のコツは、新規の面談時だけでなく、確定申告の資料依頼や年末調整の時期に毎年同じ質問を繰り返すことです。「昨年と変わりありませんか」の一言を定型化するだけで、途中から海外投資を始めた顧問先を拾えます。相手国がCRSの交換対象かどうかは、国税庁のCRSコーナーで公表されている実施国・地域の情報で確認できます
共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CRSコーナー」)|国税庁

2027年からは暗号資産も交換対象に――CARF

もう一つ、シートの設計段階で織り込んでおきたいのがCARF(暗号資産等報告枠組み)です。令和6年度税制改正で非居住者の暗号資産等取引情報に関する報告制度が整備され、日本では2026年(令和8年)から制度が施行、2027年(令和9年)に2026年分の報告を暗号資産交換業者等から受けて税務当局間の情報交換が始まる予定とされていますhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。海外取引所の利用について「まだ聞かなくていい」とは言えなくなりました。今のうちにヒアリング項目へ加えておくことをおすすめします。

まとめ

CRS情報の受領は約275万件・残高約17.7兆円に達し、国外財産調書との突合による調査事例も公表されていますhttps://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0026001-016.pdf。会計事務所としては、海外資産の確認を担当者任せにせず、ヒアリングシートで標準化して年間業務に組み込むこと。そして2027年に始まるCARFの情報交換を見据えて、暗号資産の項目を今から加えておくこと。この2点だけでも、確認漏れのリスクはかなり減らせるはずです。

本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。

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