医療法人の相続税猶予3年延長|令和8年度改正の実務対応

「令和8年度税制改正の大綱」が閣議決定され、医療法人の相続対策に関わる制度にも重要な延長措置が盛り込まれました。認定医療法人が受けられる相続税・贈与税の納税猶予制度について、その適用期限が令和8年12月31日から令和11年12月31日まで、3年延長されることが確認されています[1]。医療法人の事業承継案件を扱う機会が増えている中、この延長は多くの顧問先にとって朗報だと感じています。本稿では制度の概要と改正の背景、実務上の対応ポイントを整理します。

認定医療法人の納税猶予制度とは

持分あり医療法人が持分なし医療法人へ移行する際、出資者の相続や贈与によって発生する相続税・贈与税の納税を猶予し、最終的に免除する仕組みが「認定医療法人制度」です[2]。移行計画について厚生労働大臣の認定を受けた医療法人の出資者が、持分を放棄することを前提に、相続税・贈与税の納税が猶予されます。なお、贈与税については猶予ではなく税額控除方式を選択できる場合もあり、この点はNo.4177で詳しく整理されています[3]

今回の延長で何が変わるのか

大綱では「認定医療法人の持分に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等について、その適用期限を3年延長する」と明記されました[1]。厚生労働省の税制改正要望資料によれば、令和7年3月末時点で全国の医療法人は59,419法人、うち持分あり法人が35,766法人(60.2%)、持分なし法人が23,268法人(39.2%)、基金拠出型が385法人となっており、依然として持分あり法人が多数を占めている状況です[4]

利用実績からみる制度の定着度

同資料では、認定移行計画の認定件数についても興味深い変化が見えます。平成27~29年度に認定を受けた315法人のうち実際に制度を利用したのは47法人(15%)にとどまっていたのに対し、平成30~令和6年度に認定を受けた1,388法人のうち983法人(71%)が制度を利用しており、利用率が大きく上昇しています[4]。相続税の適用件数は令和4年が17件・902百万円、令和5年が11件・280百万円、贈与税は令和4年が10件・5,913百万円、令和5年が9件・3,005百万円と公表されており、金額ベースでは贈与税の利用が目立ちます[4]

顧問先への実務対応で押さえたいポイント

まず1つ目は、期限が令和8年末で切れると誤認している持分あり医療法人の出資者・理事長への周知です。3年延長により令和11年12月31日まで移行の検討期間が確保されたため、拙速な判断を避け、後継者や他の出資者との調整にじっくり時間をかけられるようになりました。2つ目は、認定を受けるための移行計画作成には一定の準備期間が必要になるという点。延長を「まだ余裕がある」と捉えすぎず、早期の移行計画策定を提案していくのが望ましいと考えます。3つ目は、猶予から免除に至るまでの要件(持分放棄の実行等)を継続的にフォローする体制づくりです。納税猶予はあくまで要件を満たし続けることが前提であり、途中で認定要件を欠けば猶予が打ち切られるリスクもある点は、顧問先にも丁寧に説明しておきたいところです。

まとめ

認定医療法人の相続税・贈与税納税猶予制度は、令和11年12月31日まで3年延長されることが大綱で確認されました。持分あり医療法人を顧問先に持つ場合は、この機会に移行計画の検討状況を改めて確認し、余裕を持った事業承継支援につなげていきたいところです。

本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。

参考リンク

  1. 令和8年度税制改正の大綱(2/9) : 財務省
  2. No.4150 医療法人の持分についての相続税の納税猶予
  3. No.4177 医療法人の持分についての相続税の税額控除
  4. https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/request/mhlw/08y_mhlw_k_02.pdf

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