【令和8年度改正】賃上げ促進税制Q&A|繰越控除と上乗せ廃止の実務

【令和8年度改正】賃上げ促進税制Q&A|繰越控除と上乗せ廃止の実務

この記事でわかること

中小企業の賃上げ支援の柱である「賃上げ促進税制」。令和6年度改正で赤字企業でも使える5年間の繰越控除が入り、令和8年度改正では教育訓練費の上乗せ措置の廃止という見直しが行われました[3]

「結局、今期の申告で何%控除できるのか」「繰越を使うには何が必要か」——決算対応で迷いやすいポイントをQ&A形式で整理します。


Q1. 中小企業向け賃上げ促進税制の基本形は?

青色申告書を提出する中小企業者等が、全雇用者の給与等支給額を前年度より増加させた場合に、増加額の一定割合を法人税額(個人事業主は所得税額)から控除できる制度です[1]

要件(給与等支給額の増加率) 税額控除率
前年度比 +1.5%以上 増加額の15%
前年度比 +2.5%以上 増加額の30%

控除額は法人税額の20%が上限です[1]。このほか、くるみん・えるぼし認定等による5%上乗せの仕組みがあります。

Q2. 令和8年度改正で何が変わった?

これまで「教育訓練費が前年度比5%以上増加」等の要件を満たすと控除率を10%上乗せできましたが、令和8年度税制改正でこの教育訓練費上乗せ措置が廃止されました[3]

研修費を計画的に増やして上乗せを取りにいっていた顧問先には、控除見込み額の下方修正を早めに伝えておく必要があります。仮に給与増加額150万円で10%上乗せを想定していた場合、15万円の控除減——決算予測に効いてくる金額ではないでしょうか。

Q3. 繰越控除はどんな制度?

賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額(赤字で法人税額がない場合を含む)を、翌年度以降5年間繰り越して控除できる制度です。中小企業向け措置に令和6年度改正で追加されました[1]

ただし、実務上の落とし穴が2つあります。

  1. 明細書の連続添付:未控除額が発生した事業年度以後、繰越税額控除限度超過額の明細書を毎年確定申告書に添付し続けることが必要です。控除を受けない中間の年度も添付を切らしてはいけません[1]
  2. 繰越控除を受ける年度も給与増が条件:繰越控除の適用年度において、全雇用者の給与等支給額が前年度を上回っている必要があります[1]

「赤字の年に賃上げした分は、黒字転換した年に取り戻せる。ただし申告書の添付を1年でも忘れたらアウト」——申告チェックリストへの組み込みが必須の論点です。

Q4. 適用期限と当面の対応は?

中小企業向け措置は令和9年3月31日までに開始する事業年度まで適用できます[1]。大企業・中堅企業向けの制度区分や最新の適用要件は、国税庁タックスアンサーおよび中小企業庁のガイドブックで必ず確認してください[2]

当面の実務対応としては、①教育訓練費上乗せ前提の控除見込みの見直し、②繰越明細書の添付体制(申告ソフトのチェック項目化)、③賃上げ率1.5%/2.5%のボーダー管理、の3点を決算前検討事項に加えておきたいところです。


まとめ

賃上げ促進税制は「使える企業が広がった(繰越)」一方で「控除の中身は絞られた(上乗せ廃止)」という両面の改正が続いています。顧問先の賃上げ計画と決算予測を結びつけて、早めの試算を提示していきましょう。


免責事項
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。


参考リンク

  1. 中小企業庁:中小企業向け「賃上げ促進税制」
  2. No.5927 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(全企業向け賃上げ促進税制)|国税庁
  3. 令和8年度税制改正の大綱の概要 : 財務省

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