2026年4月1日、非居住者および外国法人に対する源泉徴収の世界が大きく塗り替わりました。防衛特別所得税(1%)の新設と、復興特別所得税の税率引下げ(2.1%→1.1%)が同時に動き出したからです。会計事務所の現場では、給与計算ソフトや海外送金時の源泉徴収ロジックの見直しが急務となっています。本記事では、令和7年度税制改正で創設された防衛特別所得税の概要と、非居住者源泉徴収における実務上の合算税率の考え方、システム改修の優先順位を実務目線で整理します。
1. 防衛特別所得税とは何か――1%の新たな付加税
防衛特別所得税は、令和7年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」によって創設された付加税で、所得税の源泉徴収義務者が所得税を徴収する際に、源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額を併せて徴収・納付する仕組みです[1]。
同改正により、復興特別所得税の税率はそれまでの2.1%から1.1%へと引き下げられました[1]。結果として、源泉徴収すべき防衛特別所得税の額および復興特別所得税の額は、源泉徴収すべき所得税の額のそれぞれ1%および1.1%(合計2.1%)相当額となり、所得税と併せて徴収することとされています[1]。
つまり、付加税のトータル負担率は改正前と同じ2.1%で変わっていません。しかし「内訳」が2つに分かれたことが、実務上のインパクトを大きくしています。
適用開始日
非居住者および外国法人については、令和8年(2026年)4月1日以後に有することとなる非居住者に係る国内源泉所得、または同日以後に支払を受けるべき外国法人に係る国内源泉所得から適用されます[1]。
源泉徴収義務は「支払時点」で判定されるため、2026年4月1日以降に支払う配当・利子・使用料・人的役務提供報酬などは、原則として新ルールが適用されることになります。
2. 非居住者源泉徴収における合算税率の整理
非居住者等に対する源泉徴収の基本税率は、国税庁タックスアンサー「No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」に整理されています[2]。改正後の合算税率の考え方を、代表的な国内源泉所得別に整理すると次のようになります。
2-1. 配当・利子・使用料(租税条約適用なしの場合)
所得税本体の税率に、防衛特別所得税1%相当額と復興特別所得税1.1%相当額(合計2.1%)が上乗せされます。たとえば所得税率が20%のケースでは、20% × (1 + 0.021) = 20.42% の合算源泉税率になる、と整理するのが実務上わかりやすい考え方です。
2-2. 給与・人的役務の提供報酬
非居住者の給与や人的役務提供報酬(講演料等)の源泉所得税率20%にも、同様に2.1%の付加税が上乗せされます。改正前から数字上の最終税率は変わりませんが、納付書および徴収高計算書上の内訳記載が「所得税+復興+防衛」の三区分に変わる点が大きな相違点です。
2-3. 租税条約による軽減・免除を適用する場合
租税条約に基づき源泉所得税が軽減または免除される場合、防衛特別所得税および復興特別所得税も連動して同様に軽減・免除されます。所得税本体がゼロなら、付加税もゼロになるという基本構造は変わりません[3]。
3. 納付手続と帳票への影響
防衛特別所得税は所得税と併せて徴収・納付する仕組みのため、納付書の様式や徴収高計算書(いわゆる「納付書」)の記載方法に変更が生じます。国税庁は「納付書の記載のしかた(非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書)」を公表しており、徴収内訳の正確な記載が求められます[4]。
また、防衛特別法人税についても国税庁が納付手続等の専用ページを設けており、内国法人向けの法人税付加税との関係も整理されています[5]。
実務上のチェックポイントは以下の3点です。
3-1. 徴収高計算書の様式確認
非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書では、防衛特別所得税の額を明示的に区分記載する欄が設けられます。手書きで作成しているケースでは、最新様式に差し替えが必要です。
3-2. 会計ソフト・給与計算ソフトの源泉徴収ロジック
国内給与の源泉徴収については適用時期が異なる可能性があるため別途検証が必要ですが、非居住者への支払については2026年4月1日支払分から新ロジックの適用が必要です。ベンダーのアップデート時期と、自社の支払スケジュールを突き合わせて確認しておくべきポイントです。
3-3. 海外送金システムとの整合性
ロイヤルティ送金や非居住者役員への報酬など、海外送金システムを利用している場合、付加税の内訳変更に伴って送金指示書の摘要欄や、源泉徴収額の自動計算ロジックの見直しが必要となるケースがあります。
4. 会計事務所の実務対応――ツール活用で効率化
合算税率自体は据え置きとはいえ、内訳の二本立て化により「どの帳票・どのシステムが影響を受けるか」を早期に棚卸しすることが重要です。実務対応の優先順位は次のとおりです。
第一に、クライアントごとに非居住者・外国法人への支払一覧を作成し、2026年4月以降の支払予定を可視化します。配当・利子・使用料・人的役務報酬・賃料の5区分でリスト化しておくと、後の納付処理がスムーズになります。
第二に、使用している会計ソフト・給与計算ソフトの対応バージョンを確認します。主要ベンダーは令和7年度税制改正対応のアップデートを順次提供していますので、リリースノートで「防衛特別所得税」の対応状況を確認してください。
第三に、租税条約届出書・源泉徴収免除証明書の更新状況をクライアントごとに点検します。租税条約による軽減・免除が適用される場合、付加税も連動して影響を受けるため、届出書の有効性確認は2026年4月以降の処理精度を左右します[6]。
まとめ
2026年4月1日施行の防衛特別所得税1%の創設と復興特別所得税1.1%への引下げは、合算後の付加税率は据え置き(2.1%)ながら、納付書・帳票・システムの内訳記載が大きく変わる改正です。非居住者・外国法人への源泉徴収は、源泉徴収義務の判定が「支払時点」で行われるため、2026年4月以降の支払いから直ちに新ルールが適用されます。会計事務所としては、クライアントの支払予定リスト化、会計ソフトのアップデート確認、租税条約届出書の点検という3点を、4月の繁忙期前に完了させておくことが、後のトラブル回避につながります。
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
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