【2026年版】国外事業者から映像制作を受注・国内撮影した場合の消費税は?課税関係を具体例で解説
海外の企業から映像制作を依頼され、撮影地は日本国内——。こういったクロスボーダーの案件を担当する会計事務所スタッフなら一度は迷ったことがあるのではないでしょうか。「相手が外国法人だから免税?でも撮影は国内だから課税?」この判断、実は2つのステップを順番に踏むことで整理できます。本記事では、消費税法の基本的な考え方から、具体的なケース別判断、実務上の注意点までを解説します。
消費税の課税判定は「2ステップ」で考える
国外事業者からの受注案件では、まず次の2つの問いに順番に答えることが重要です。
ステップ①:その取引は「国内取引」か?
ステップ②:国内取引であれば「輸出免税」が適用されるか?
この順番を間違えると判断が狂います。一つずつ見ていきましょう。
ステップ①:国内取引かどうかの判定
映像制作・国内撮影の場合、撮影という役務が行われた場所は日本国内です。したがって国内取引に該当し、消費税の課税対象となります(不課税ではありません)。
ポイント:「相手が外国法人だから国外取引」という誤解が現場ではよくあります。役務提供の課税地は「相手の所在地」ではなく「役務を行った場所」で判定します。
ステップ②:輸出免税が適用されるか
国内取引と判定された後、次に「輸出免税」の適用があるかを検討します。
- 国内に所在する資産の運送や保管
- 国内における飲食や宿泊
- これらに準ずるもので、非居住者が国内において直接便益を享受するもの
映像制作における国内撮影が「国内において直接便益を享受するもの」に該当するかどうかが、判断の核心です。
「直接便益の享受」をどう判断するか
この「国内において直接便益を享受する」という概念がやや難解です。現場感覚でいえば、「そのサービスの効果が国内だけで完結するか、国外に及ぶか」がポイントです。
免税になりやすいケース
役務の提供を受けた後、その効果・成果が国外で活用・享受される場合です。
課税になりやすいケース
役務の提供がその場(国内)で完結し、国内においてのみ便益が享受される場合です。
映像制作・国内撮影への当てはめ:3つの具体例
ケースA:完成映像を国外で使用する場合(輸出免税)
前提:米国の映画制作会社(国内に支店なし)が、日本を舞台にした映画の一部シーンを日本の映像制作会社に発注。撮影は東京都内で行い、完成映像データを米国本社に納品。米国および世界各国で公開。
– 役務の提供場所 → 国内(課税対象の取引)
– 相手方 → 非居住者(国外事業者、日本国内に支店なし)
– 便益の享受場所 → 完成映像は国外(米国)で使用・公開される
– → 輸出免税(消費税率0%)が適用される
会計処理のポイント:
売上は「免税売上」として計上。撮影機材のレンタル費、スタジオ代、外注スタッフへの支払いなど、国内での課税仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象となります。輸出売上の割合が高い場合、消費税の還付申告になる可能性があります。
ケースB:韓国のドラマ制作会社から受注、日本ロケを担当する場合(輸出免税)
前提:韓国に本社を置くドラマ制作会社(日本国内に支店・営業所なし)から、日本国内でのロケ撮影を一括受注。完成映像はNetflixなどの国際配信プラットフォームで全世界配信。
課税判定:
– 相手方 → 非居住者(韓国法人、国内支店なし)
– 完成映像の使用場所 → 国外(グローバル配信)
– → 輸出免税(消費税率0%)が適用される
ケースC:国外事業者が日本国内に支店を持つ場合(課税)
前提:中国に本社を置く企業から映像制作を受注。ただし、この企業は東京に日本支店を持っており、発注の窓口も日本支店が担当。
国外事業者であっても、国内に支店・営業所を有する場合は「居住者」と同様に扱われるため、役務提供は輸出免税の対象外となります

- → 通常の課税取引(消費税率10%)が適用される

実務チェックリスト
映像制作で国外事業者からの受注を担当する際は、以下の点を必ず確認してください。
① 相手方の確認
– [ ] 相手方は外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号に定める非居住者か
– [ ] 日本国内に支店・営業所・代理人がいないか
– [ ] 契約書の住所・発注窓口はどこか(本社か支店か)
② 役務の内容確認
– [ ] 完成した映像・コンテンツが国外で使用・享受されるか
– [ ] 混在する役務(宿泊手配・ロケ地コーディネート等)が含まれていないか
③ 免税適用の証明書類(7年保存)
– [ ] 契約書(相手方が非居住者であることの証明)
– [ ] 発注書・請求書(国外本社名義であること)
– [ ] 完成物の納品先・使用目的を示す書類
④ 消費税申告上の処理
– [ ] 売上は「免税売上」として区分して計上
– [ ] 対応する課税仕入れ(機材費・外注費等)は仕入税額控除の対象として処理
– [ ] 還付申告となる場合は「消費税の還付申告に関する明細書」を添付
まとめ:判断のフローチャート
国外事業者から映像制作を受注
↓
【判定①】撮影は国内か?
→ YES → 国内取引(課税対象)
↓
【判定②】相手方は非居住者(国内支店なし)か?
→ NO(国内支店あり) → 課税(10%)
→ YES(純粋な非居住者)
↓
【判定③】完成映像は国外で使用・享受されるか?
→ YES → 輸出免税(0%)
→ NO(国内のみで使用)→ 課税(10%)
国外事業者からの映像制作受注は、相手方の属性(国内支店の有無)と、完成物の使用場所の2点が判断の核心です。実務では、契約書の発注者名義と国内支店の有無を必ず最初に確認する習慣をつけることをお勧めします。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
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