「外国子会社の決算が固まる前にCFC合算所得を計算しなければならない」――。長年、海外子会社を持つ日本企業の経理担当者や、その顧問を務める税理士を悩ませてきたこの実務上の難点が、令和7年度税制改正でようやく解消されることになりました。
合算時期が「2か月経過日」から「4か月経過日」へ後ろ倒しされ、さらに申告書への添付書類の範囲も縮小される――。3月決算法人であれば、まさに今期(2026年3月期)の申告から実際に適用される改正です。実務上のインパクトは決して小さくありません。
本記事では、国税庁公表資料に基づき、外国子会社合算税制(CFC税制)における2つの効率化措置と、申告実務で押さえるべきポイントを整理します。
1. CFC合算時期が「4か月後」に|改正の中身
外国子会社合算税制では、外国関係会社の課税対象金額等を内国法人の所得に合算するタイミングが法令で定められています。今回の改正で、租税特別措置法66条の6第1項が次のように見直されました [1]。
- 改正前:外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から 2か月 を経過する日を含む内国法人の事業年度に合算
- 改正後:外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から 4か月 を経過する日を含む内国法人の事業年度に合算
財務省の改正パンフレットでも、グローバル・ミニマム課税の導入に伴う追加的な事務負担を踏まえ、CFC税制の合算時期を後ろ倒しするとともに、申告添付書類の範囲も併せて見直すと明記されています [2]。
適用開始時期に注意
この改正は、内国法人の 令和7年4月1日以後に開始する事業年度 に係る外国関係会社の課税対象金額等(その外国関係会社の同年2月1日以後に終了する事業年度に係るものに限る)について適用されます(改正法附則50条1項)[1]。
3月決算の日本親会社と12月決算の外国関係会社という典型的なパターンでは、外国関係会社のY2年12月期の所得を、これまではY3年3月期(決算翌日から2か月経過=Y3年2月末を含む期)に合算していました。改正後は同じY2年12月期の所得をY4年3月期(4か月経過=Y3年4月末を含む期)に合算することになります。
なお、令和6年12月1日から令和7年1月31日までに事業年度を終了する外国関係会社については、新ルールを選択適用できる経過措置も設けられました(改正法附則50条2項)[1]。
2. 添付・保存書類の範囲も縮小
CFC税制では、外国関係会社ごとに膨大な書類の添付・保存が求められてきましたが、租税特別措置法施行規則22条の11第48項の改正により、次の2項目が添付・保存書類の範囲から 除外 されました [1]。
- 株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書
- 貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書
引き続き必要なのは、貸借対照表・損益計算書、本店所在地国の法人所得税申告書の写し、企業集団等所得課税規定の不適用計算明細、株主等の氏名等を記載した書類などです。海外子会社が多数ある企業では、削減される書類点数を試算するだけでも作業時間の短縮が見込めます。
3. 実務で効率化を進める3つのチェックポイント
改正のメリットを最大限に活かすため、実務では次の3点を整理しておきたいところです。
① 親子会社の事業年度マトリクスの再確認
合算時期が変わることで、これまで同一事業年度内に処理していた合算所得が翌期にずれるケースがあります。連結会計上のスケジュールやグループ内資料依頼の締切も、合算時期に合わせて見直しましょう。
② 添付書類リストのテンプレート更新
税理士法人山田&パートナーズの解説でも指摘されているとおり、添付書類の範囲縮小は地味ながら実務負担軽減に直結します [3]。社内・事務所内で使用しているCFC申告チェックリストを早めに更新しておくのがおすすめです。
③ グローバル・ミニマム課税との並走体制の整備
今回の効率化措置は、グローバル・ミニマム課税(GloBEルール)の導入による追加負担を見据えたものです [2]。CFC計算とGloBE計算では、適用除外基準も対象所得の範囲も異なります。両者を並走させるためのデータ収集フォーマットを今のうちに整えておきましょう。
まとめ
CFC合算時期の4か月への延長は、海外子会社の決算・現地申告が固まってから合算所得を計算できるようになる、実務上きわめて意義の大きい改正です。添付書類の範囲縮小と合わせ、3月決算法人なら2026年3月期の申告から効果を体感できます。今のうちにグループ内の資料収集スケジュールとチェックリストを見直し、グローバル・ミニマム課税との並走体制を整えていきましょう。
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
コメント