# 【2026年4月】グローバルミニマム課税QDMTT実務対応ガイド
「うちの顧問先、ようやくIIRに慣れたと思ったら、今度はQDMTTにUTPRですか」——筆者の事務所でも、令和7年度税制改正の通達が出た春先から、こんなぼやきが連日のように飛び交っている。グローバル・ミニマム課税の残り2ルール、QDMTTとUTPRがついに法制化され、令和8年(2026年)4月1日以後開始対象会計年度から、IIRと合わせた3ルールが全面適用となる [1]。3月決算法人にとっては、初回のGloBE情報申告(GIR)の提出期限が2026年9月30日に迫っており [2]、いまや「準備中」では済まされない局面に入った。本稿では、現場目線で押さえておきたい制度の勘どころと、セーフハーバー活用による工数圧縮、そしてツール導入のタイミングについて整理したい。
グローバル・ミニマム課税の制度概要と3つのルール
そもそもグローバル・ミニマム課税は、OECD/G20が主導する「BEPS2.0プロジェクト・第2の柱(Pillar 2)」を国内法に落とし込んだものだ。連結総収入金額が7億5,000万ユーロ(円換算でおおむね1,200億円)以上の多国籍企業グループを対象に、各国の実効税率が最低税率15%を下回らないよう、不足分(いわゆる「トップアップ税」)を課税する仕組みである [3]。
制度の柱は3つある。まず、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)。日本では令和5年度税制改正で「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」として先行的に法制化されており、令和6年4月1日以後開始対象会計年度からすでに走っている [4]。次に、軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)。これはIIRで拾い切れなかった不足分を、子会社等の所在地国側で課税する、いわばバックストップだ。そして、国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)。自国分のトップアップ税を、海外当局に持っていかれる前に自国で先取りする仕組みである [1]。
このうち令和7年度税制改正で法制化されたUTPR・QDMTTが、いずれも2026年4月1日以後開始対象会計年度から動き出す [5]。
QDMTT/UTPRの対象判定とトップアップ税の基本構造
対象企業の入口は、IIRとそろえて「最終親会社の連結総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の特定多国籍企業グループに属する構成会社等」だ [1]。
計算ロジックは少し独特である。国別実効税率(ETR)は、対象租税の額をGloBE所得で除して算出する。これが15%を下回ったとき、その差分にGloBE所得(実質ベース所得除外額を控除後)を掛けてトップアップ税額を出す [6]。ここで注意したいのは、判定単位が「国・地域単位(ジュリスディクション単位)」であって、構成会社単位ではないという点。同じ国内でも会社ごとに税率がブレるケースは多いが、合算して国別で見るというのが世界共通ルールだ。
QDMTTでは、日本国内に所在する構成会社等のETRが15%を下回ると、海外当局がIIRやUTPRで徴収するより先に、日本側で先取り課税する建付けになる。繰延税金資産の取扱い、外国子会社配当益金不算入とのにらみ合いなど、通常の法人税申告とは別世界の調整項目が並ぶため、「いつもの申告と同じ感覚」で進めると現場が止まる。初年度は特に時間配分に余裕を持って臨みたい。
移行期間CbCRセーフハーバーで初年度の実務負担を軽減する
ありがたいことに、初年度の重い計算をスキップできる救済策が用意されている。「移行期間CbCRセーフハーバー」だ。令和6年4月1日から令和8年12月31日までの間に開始する対象会計年度(令和10年6月30日までに終了するものに限る)について、国別報告事項(CbCR)データを使って次の3要件のいずれかを満たせば、当該国・地域のトップアップ税額をゼロにできる [7]。
ひとつめが、デミニマス要件。当該国・地域の総収入が1,000万ユーロ未満、かつ税引前当期純利益が100万ユーロ未満であれば該当する。ふたつめが、簡素な実効税率要件。税金費用を税引前当期純利益で割った簡易ETRが、2024年中は15%以下、2025年中は16%以下、2026年中は17%以下であればクリアだ。3つめが、通常利益要件。税引前当期利益の額が実質ベース所得除外額以下であれば成立する [7]。
このセーフハーバーをうまく使えば、本来は数百項目に及ぶGloBE所得・対象租税の調整作業を回避できる。初年度の工数は文字どおり桁が変わるイメージだ。まずは顧問先のCbCRデータを早めに手元に集め、「どこの国が要件を満たしそうか」を地図上に色塗りしておく——この一手間が、後の山場で効いてくる。
GIR(GloBE情報申告)の提出期限とe-Tax対応
申告・納税の期限は、IIR・UTPR・QDMTTのいずれについても、対象会計年度終了の日の翌日から1年3月以内が原則だ。ただし、初回に限っては、終了の日の翌日から1年6月以内に延長されている [1]。
3月決算法人の場合、初回のGIR提出期限は2026年9月30日。もう目と鼻の先である [2]。国税庁は2024年9月に「特定多国籍企業グループ等報告事項等」のGIR様式を公表しており、提出はe-Tax経由でCSVまたはXMLファイルにより行う仕組みが標準となる見込みだ [8]。CbCRと同じ構図で、いつもの法人税申告ソフトでは歯が立たないケースが大半。専用ツールに頼るか、国税庁の指定フォーマットに沿ってデータを整える、いずれかの腹を早めに決めておきたい。
会計事務所が今すぐ着手すべき3つの実務準備
ひとつめは、対象会計年度と申告期限の棚卸し。3月決算なら2026年9月末、12月決算なら2027年6月末がそれぞれ初回GIRの提出期限となる。顧問先ごとに表にして「あといつまで」を可視化しておくと、上司への報告も滑らかだ。
ふたつめは、移行期間セーフハーバー要件の事前判定。手元にあるCbCRと国別損益データを使って、適用できそうな国を先に切り分けてしまう。フル計算が必要な国を絞り込めれば、繁忙期の負荷は劇的に軽くなる。
3つめは、会計ソフトと税務計算ツールの連携体制づくり。GloBE所得の算定には、IFRS等の会計基準ベースの数値と税務調整の両方が必要だ。表計算ソフトに手で打ち込んで突き合わせる方式は、初年度こそ何とかなっても、2年目以降はほぼ確実に破綻する。Big4各社や国産ベンダーの専用ツールには一長一短あるが、無料トライアルを早めに走らせて感触をつかんでおくのが賢明だ。
まとめ
グローバル・ミニマム課税は、2026年4月にQDMTT・UTPRが加わることで、いよいよ完全運用フェーズに入る。対象は連結総収入7億5,000万ユーロ以上の大規模グループに限定されるとはいえ、その子会社・関連会社を顧問先として抱える会計事務所には、実務関与を求められる場面が確実に増えてくる。鍵を握るのは、移行期間CbCRセーフハーバーをどれだけ使い倒せるかと、専用ツールでのデータ整備に早めに踏み切れるかだ。GIR提出期限から逆算すれば、本年の第3四半期までに対応体制を固めておきたいところである。
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
参考リンク
- グローバル・ミニマム課税関係|国税庁
- グローバル・ミニマム課税に係る初年度申告対応のポイント (前編) | 情報センサー2026年5月 Tax update | EY Japan
- グローバル・ミニマム課税の法制化について : 財務省
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023003-075.pdf
- グローバル・ミニマム課税に関する令和7年度税制改正が施行(UTPR・QDMTT) | EY Japan
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-012.pdf
- グローバル・ミニ̍
- グローバル・ミニマム課税に関する様式等|国税庁
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