令和7年分の国外財産調書――その提出期限である2026年6月30日が、もう目の前まで迫ってきている。海外資産を持つ個人顧客を抱える会計事務所にとっては、毎年この時期がいちばん神経をすり減らす繁忙期だろう。書面提出のまま運用している事務所も少なくないが、e-Taxソフトを使えば作成から提出までを一気通貫で電子化できる。提出漏れと記載ミスのリスクを同時に潰せるという意味で、今年こそ電子化に踏み切る価値は十分にある。本稿では、提出義務の基本要件をおさえつつ、e-Taxによる電子提出フローと、2026年提出期限を前に押さえておきたい実務ポイントを整理してみたい。
提出義務の基本要件——5,000万円超の居住者が対象
「居住者」と「非永住者」の定義を改めて確認
外資系企業の駐在員などで、来日5年目前後の方を顧問先に抱えている事務所は、年末時点の居住者判定が翌年の調書義務に直結する。この点、私自身も毎年12月の打ち合わせで必ず確認するようにしている。
相続開始年には特例がある
被相続人がもともと国外財産を保有していたケースでは、相続人が突然5,000万円ラインを超えてしまうことがある。この特例があるおかげで、相続発生年は実質的に従来分のみで判定できるわけだ。
e-Taxによる電子提出のメリットと手順
提出方法は大きく3パターン
実務上、選びうるルートはおおむね以下の3つに整理できる。
- e-Taxソフト(ダウンロード版)で作成・電子送信
- 書面で作成し、税務署に持参
- 書面で作成し、郵送で提出
合計表の添付は必須
提出した場合・しなかった場合のインセンティブと加重
国外財産調書制度には、適正な提出を促すための「アメとムチ」が組み込まれている。期限内提出をしているかどうかで、その後の加算税の取り扱いが大きく変わってくる。
期限内提出で過少申告加算税等が5%軽減
申告内容を完璧に固めるのは難しいとしても、調書だけはきちんと出しておく。それが顧客資産の保険になる、という発想を共有しておきたい。
提出がない・記載がない場合は5%加重
つまり、提出するか否かで実質的に10ポイントの差が生じる。これは決して小さくない。
書類提示拒否時の特例——軽減なし、加重10%
ただし、提示等をする方の責めに帰すべき事由がない場合は除かれる。海外金融機関とのやり取りに時間がかかる場合などは、税務当局と事前にコミュニケーションを取っておくことが肝要だろう。
罰則規定——「うっかり未提出」では済まされない
「うっかり忘れていた」では済まされないテーマだ、ということを顧客にも繰り返し伝えておきたい。
会計事務所の実務チェックリスト(2026年版)
最後に、6月30日に向けて事務所内で回しておきたいチェック項目を整理しておく。
- 対象顧客の洗い出し:12月31日時点で国外財産5,000万円超の可能性がある居住者を抽出
- 評価額の確定:12月31日の現況により国外財産の価額を把握(時価または見積価額)
- 「国外財産調書合計表」の添付準備
- e-Taxソフトのバージョン確認、電子証明書(マイナンバーカード等)の有効期限確認
- 提出後の受信通知の保管——顧客への報告書類として整備
- 期限内提出ができない事情がある場合は、所轄税務署への事前連絡を検討
ありがちなのが、為替レート換算で時価がぎりぎり5,000万円を超える/超えないというボーダーケース。判定を一度走らせて「提出不要」と決めたあとで、追加情報が出てきて再判定が必要になる、というパターンは毎年ある。年末時点の現況に立ち返って二度確認する手間は惜しまない方がよい。
まとめ
6月30日という期限を逃せば、加算税の軽減(▲5%)が消えるどころか加重(+5%)に切り替わる。差し引き10ポイント、決して小さな数字ではない。e-Tax経由の電子提出はミスを減らすだけでなく、受信通知という形で提出証跡を残せる点でも、顧客への説明責任の観点から大きなメリットがある。
書面提出を続けている事務所こそ、2026年の今期を「電子化への切替元年」と位置づけてみてはどうだろうか。事務所のデジタル化と、顧客のリスク管理の両方を一気に前に進めるチャンスである。
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
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