【2026年6月30日期限】国外財産調書のe-Tax提出ガイド|実務効率化

令和7年分の国外財産調書――その提出期限である2026年6月30日が、もう目の前まで迫ってきている。海外資産を持つ個人顧客を抱える会計事務所にとっては、毎年この時期がいちばん神経をすり減らす繁忙期だろう。書面提出のまま運用している事務所も少なくないが、e-Taxソフトを使えば作成から提出までを一気通貫で電子化できる。提出漏れと記載ミスのリスクを同時に潰せるという意味で、今年こそ電子化に踏み切る価値は十分にある。本稿では、提出義務の基本要件をおさえつつ、e-Taxによる電子提出フローと、2026年提出期限を前に押さえておきたい実務ポイントを整理してみたい。

提出義務の基本要件——5,000万円超の居住者が対象

国外財産調書の提出義務は、その年の12月31日時点で国外財産の価額の合計額が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)に課されている。提出期限はその年の翌年6月30日。つまり、令和7年(2025年)12月31日時点の判定で対象となる方は、2026年6月30日が期限となる
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁
提出先は所得税の納税地(納税義務がない方は住所地、国内に住所がないときは居所地)を所轄する税務署長である
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

「居住者」と「非永住者」の定義を改めて確認

ここでいう「居住者」とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を指す。「非永住者」は、居住者のうち日本国籍を有しておらず、かつ過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人だ。居住者かどうかの判定は、その年の12月31日の現況による
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

外資系企業の駐在員などで、来日5年目前後の方を顧問先に抱えている事務所は、年末時点の居住者判定が翌年の調書義務に直結する。この点、私自身も毎年12月の打ち合わせで必ず確認するようにしている。

相続開始年には特例がある

相続の開始の日が属する年(相続開始年)の年分の国外財産調書については、その相続または遺贈により取得した「相続国外財産」を記載しないで提出することが認められている。この場合、提出義務の判定も、国外財産の価額合計から相続国外財産を除外して行う
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

被相続人がもともと国外財産を保有していたケースでは、相続人が突然5,000万円ラインを超えてしまうことがある。この特例があるおかげで、相続発生年は実質的に従来分のみで判定できるわけだ。

e-Taxによる電子提出のメリットと手順

国税庁の手続案内によれば、国外財産調書はパソコンからe-Taxソフトをダウンロードし、調書および合計表を作成して電子送信することができる。書面で作成のうえ、持参または郵送によって提出する従来型のルートも引き続き利用可能だ
F4-4 国外財産調書(同合計表)|国税庁

提出方法は大きく3パターン

実務上、選びうるルートはおおむね以下の3つに整理できる。

  1. e-Taxソフト(ダウンロード版)で作成・電子送信
  2. 書面で作成し、税務署に持参
  3. 書面で作成し、郵送で提出
ファイル形式やバージョン要件は変動するため、提出前には必ずe-Taxホームページの「e-Taxソフトについて」で最新仕様を確認しておきたい
F4-4 国外財産調書(同合計表)|国税庁

合計表の添付は必須

国外財産調書を提出する際は、「国外財産調書合計表」を作成して添付する必要がある
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁
。e-Taxソフト経由であれば本表とまとめて送信できるため、別途郵送する手間が省ける。書面提出の場合に合計表を入れ忘れて返戻――という冷や汗体験は、私の周りでもしばしば耳にする。電子化のシンプルな効用として案外見落とせないポイントだ。

提出した場合・しなかった場合のインセンティブと加重

国外財産調書制度には、適正な提出を促すための「アメとムチ」が組み込まれている。期限内提出をしているかどうかで、その後の加算税の取り扱いが大きく変わってくる。

期限内提出で過少申告加算税等が5%軽減

期限内に提出された国外財産調書に記載がある国外財産について、所得税または相続税の申告漏れが生じた場合――その国外財産に係る過少申告加算税または無申告加算税が5パーセント軽減される
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

申告内容を完璧に固めるのは難しいとしても、調書だけはきちんと出しておく。それが顧客資産の保険になる、という発想を共有しておきたい。

提出がない・記載がない場合は5%加重

逆に、提出期限内に国外財産調書の提出がない場合、または提出された調書に記載すべき国外財産の記載がない場合(重要なものの記載が不十分であると認められる場合を含む)には、その国外財産に係る申告漏れに対する過少申告加算税等が5パーセント加重される
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

つまり、提出するか否かで実質的に10ポイントの差が生じる。これは決して小さくない。

なお、相続国外財産については、相続国外財産を有する方の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に調書の提出がない場合等は、加重措置の対象とならない取扱いとされている
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

書類提示拒否時の特例——軽減なし、加重10%

さらに踏み込んだ特例も用意されている。国外財産に係る所得税・相続税について修正申告等があり、その日前に「調書に記載すべき国外財産の取得・運用・処分に係る書類(電磁的記録や写しを含む)」の提示等を求められたケースだ。提示等を求められた日から60日を超えない範囲内で指定された期限までに書類の提示等がなかった場合、軽減措置は適用されず、加重割合は5パーセントから10パーセントに引き上げられる
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

ただし、提示等をする方の責めに帰すべき事由がない場合は除かれる。海外金融機関とのやり取りに時間がかかる場合などは、税務当局と事前にコミュニケーションを取っておくことが肝要だろう。

罰則規定——「うっかり未提出」では済まされない

国外財産調書を提出しなかった場合や偽りの記載をして提出した場合の罰則も法定されている。具体的には、調書に偽りの記載をして提出した場合、または正当な理由がなく国外財産調書をその提出期限までに提出しなかった場合には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処される可能性がある
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁
ただし、正当な理由がない不提出については、情状により刑の免除がありうる旨も併せて定められている
No.7456 国外財産調書の提出義務|国税庁

「うっかり忘れていた」では済まされないテーマだ、ということを顧客にも繰り返し伝えておきたい。

会計事務所の実務チェックリスト(2026年版)

最後に、6月30日に向けて事務所内で回しておきたいチェック項目を整理しておく。

  • 対象顧客の洗い出し:12月31日時点で国外財産5,000万円超の可能性がある居住者を抽出
  • 評価額の確定:12月31日の現況により国外財産の価額を把握(時価または見積価額)
  • 「国外財産調書合計表」の添付準備
  • e-Taxソフトのバージョン確認、電子証明書(マイナンバーカード等)の有効期限確認
  • 提出後の受信通知の保管——顧客への報告書類として整備
  • 期限内提出ができない事情がある場合は、所轄税務署への事前連絡を検討

ありがちなのが、為替レート換算で時価がぎりぎり5,000万円を超える/超えないというボーダーケース。判定を一度走らせて「提出不要」と決めたあとで、追加情報が出てきて再判定が必要になる、というパターンは毎年ある。年末時点の現況に立ち返って二度確認する手間は惜しまない方がよい。

まとめ

6月30日という期限を逃せば、加算税の軽減(▲5%)が消えるどころか加重(+5%)に切り替わる。差し引き10ポイント、決して小さな数字ではない。e-Tax経由の電子提出はミスを減らすだけでなく、受信通知という形で提出証跡を残せる点でも、顧客への説明責任の観点から大きなメリットがある。

書面提出を続けている事務所こそ、2026年の今期を「電子化への切替元年」と位置づけてみてはどうだろうか。事務所のデジタル化と、顧客のリスク管理の両方を一気に前に進めるチャンスである。

本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。

コメント