はじめに——「暗号資産にもCRSが来た」と聞いて、皆さんはどう動きましたか?
令和6年度税制改正で導入が決まった、非居住者の暗号資産等取引情報を税務当局間で自動的に交換する新制度――いわゆる「CARF(Crypto-Asset Reporting Framework:暗号資産等報告枠組み)」が、ついに令和8年(2026年)1月1日から動き出しました

。国税庁は令和7年9月にFAQを公表し、令和8年3月に最終改訂版を出しています https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
ここから先、国内の暗号資産交換業者等は令和9年(2027年)4月30日までに、令和8年中の非居住者取引情報を所轄税務署長へ報告することになります

。私たち会計事務所の立場からすると、暗号資産関連の顧問先にとっては届出書管理と報告体制の構築、非居住者顧客を抱える法人クライアントにとっては実務フローの見直しが、いま現在進行形の課題です。本稿では、現場目線で押さえておきたいポイントを整理しました。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
CARFとは何か――OECDが策定した、もう一つの「自動的情報交換」
CRSと並ぶ枠組み、と理解するのが早い
CARFは、OECDが暗号資産を利用した国際的な脱税・租税回避への対策として策定した国際基準で、日本を含む各国がその実施を約束しました

。すでに運用されている金融口座情報の自動的交換制度(CRS)と並ぶ枠組み、と捉えると腹落ちが早いと思います。これまで国境を越える暗号資産の移転は当局にとって死角でしたが、その死角を埋めるための仕組み、と言い換えてもいいでしょう。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
日本での法的根拠
国内法の側では、令和6年度税制改正により「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」(いわゆる実特法)が改正され、一定の暗号資産交換業者等に対して非居住者の取引に関する報告義務が課されました

。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
施行スケジュール——カレンダーに書き込んでおきたい4つの日付
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和7年12月31日 | この日時点で暗号資産交換業者等と取引中の者は、令和8年1月1日以後すみやかに届出書提出が必要 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf |
| 令和8年1月1日 | 制度施行。以後に新規取引を開始する者は届出書の提出が必要 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf |
| 令和9年4月30日 | 暗号資産交換業者等による初回報告期限(令和8年分)
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁 |
| 令和9年以後 | 租税条約等に基づき、各国税務当局と自動的に情報交換
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誰が、何を報告するのか
報告義務者は「報告暗号資産交換業者等」
報告義務を負うのは国内に所在する暗号資産交換業者等です

。よくある誤解として「いわゆる仮想通貨取引所だけ」と思われがちですが、暗号資産デリバティブを取り扱う業者など、実特法上の「報告暗号資産交換業者等」に該当する事業者も含まれます。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
報告される情報
報告される情報には、非居住者の氏名、居住地国、取引の総額などが含まれます

。具体的な項目はFAQに詳細が示されており、暗号資産同士の交換取引・法定通貨との交換取引・移転取引などが、それぞれ報告対象として整理されています https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
取引者側の届出書提出義務
ここがいちばん見落としやすいポイントです。令和8年1月1日以後に暗号資産交換業者等との間で暗号資産等取引を行う者、または令和7年12月31日時点で取引中の者は、暗号資産交換業者等へ居住地国名等を記載した届出書を提出しなければなりません https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf。実務的には口座開設時の本人確認とあわせて運用されるケースが多く、既存顧客には事業者側から再提出を依頼する流れが一般的になりそうです。
会計事務所が支援すべき4つの実務ポイント
1. 顧問先が「報告暗号資産交換業者等」に該当するかの判定
暗号資産関連のサービスを提供する顧問先がいる場合、まず実特法上の報告義務者に該当するかをFAQに沿って確認するところから始めます https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf。該当するなら、令和8年中の取引データを収集・蓄積する体制をいまから組み立てておく必要があります。
2. 既存顧客への届出書再取得フロー
令和7年12月31日時点で取引していた既存顧客については、令和8年以降に居住地国情報の届出書を再取得する作業が発生します https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf。紙ベースで集めると確実にハマるので、電子的な届出書回収フローを設計し、本人確認データと突合する仕組みを早い段階で作っておくのが効率化のカギになります。
3. 非居住者ステータスの判定ロジック
CARFはあくまで「非居住者」の取引情報が対象です

。届出書記載の居住地国情報と、本人確認情報(住所等)との整合性チェックを自動化しておくと、誤報告リスクをかなり抑えられます。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
4. 法人顧客の海外子会社・関係会社対応
法人顧問先が海外子会社経由で暗号資産取引を行っているケースでは、現地でも同様のCARF対応が並走している可能性が高いです。CARFは多国間の枠組みであり、租税条約等の情報交換規定に基づいて各国税務当局と自動的に情報交換される建付けですから

、グループ全体での情報統合と、海外子会社支援まで視野に入れたいところです。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
CRSとの違いと、所得税申告への影響
ここでひとつ注意したいのが、非居住者の課税関係そのものは変わらない、という点です。非居住者が日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産を譲渡することによって生ずる所得は、現行制度上、所得税の課税対象外とされており、源泉徴収の対象ともなっていません https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/carf/pdf/0025009-025.pdf。
つまりCARFは、日本国内で課税するための制度というより、非居住者の本国における適正課税のための情報提供という色合いが濃い制度なのです。一方で、日本居住者の海外暗号資産取引については、相手国からのCARF情報が日本の国税庁にも届くようになります。海外取引所での申告漏れは、これから捕捉が格段に強化されると考えておいたほうがいいでしょう。
まとめ
CARFは令和8年1月1日に施行され、令和9年4月30日が初回報告期限となる新しい国際情報交換制度です

。会計事務所として優先したいのは次の4点です。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
- 顧問先が「報告暗号資産交換業者等」に該当するかの判定
- 既存顧客への届出書回収フローの設計
- 居住地国判定の自動化
- 海外子会社・関係会社対応
国税庁の「CARFコーナー」には制度概要・FAQ・様式が一元化されていますから

、最新情報を定期的にチェックしつつ、令和9年4月の初回報告に向けて、余裕を持って準備を進めていきましょう。
暗号資産等報告枠組み(CARF)に基づく自動的情報交換に関する情報(「CARFコーナー」)|国税庁
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
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