この記事でわかること
- 2026年4月から少額減価償却資産の特例の上限が30万円から40万円に引き上げられた概要
- 適用対象となる中小企業の要件(従業員数の変更点に注意)
- 年間300万円の上限など変わらないルールの確認
- 顧問先に案内すべき実務上の注意点・活用アドバイス
「30万円の壁」がついに「40万円」へ
担当先のクライアントから「最近パソコンが35万円くらいして、特例が使えなかった」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。令和8年度税制改正により、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額基準がついに30万円未満から40万円未満に引き上げられました(参照:財務省|令和8年度税制改正の大綱(3/9))。適用開始は令和8年(2026年)4月1日以後に取得または製作した減価償却資産からです。
この特例は、中小企業が一定金額未満の資産を購入したとき、通常の減価償却によらず取得した年に全額を損金算入できるというものです(参照:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)。PCやタブレット、業務用の機器類は価格が上がり続けており、旧来の「30万円の壁」を超えてしまうケースが増えていました。今回の改正はその実態にようやく追いついた、というのが正直な印象です。
適用期限は令和11年3月31日まで3年間延長されています(参照:財務省)。
改正の3つのポイント——まずここだけ押さえてください
① 取得価額の上限:30万円未満 → 40万円未満
最も大事な変更点です。2026年4月1日以後に取得した資産であれば、39万9,999円までの減価償却資産を即時全額損金算入できます。なお、税込・税抜どちらで判定するかは、各社の消費税の経理処理方針(課税事業者かどうか、税込経理か税抜経理か)によって変わります(参照:国税庁)。この点は意外と忘れがちなので確認しておきたいところです。
② 対象法人の従業員要件:500人以下 → 400人以下に厳格化
今回の改正で、もう一つ見逃せない変更があります。これまで「常時使用する従業員が500人以下」だった要件が、400人以下に引き下げられました(参照:財務省)。
従業員数が400人超・500人以下の規模感の会社は、今まで特例の対象でしたが、改正後は適用外になります。規模の大きな中小企業が顧問先にいる場合は、要件を一度確認してみてください。
ちなみに、「常時使用する従業員」にはパート・アルバイト等の非正規労働者も含まれます(参照:国税庁)。頭数で判断するときは注意が必要です。
③ 年間合計限度額:300万円(こちらは変わらず)
「40万円未満ならいくらでも使える」と思われがちですが、この特例による損金算入の合計額は、事業年度を通じて300万円が上限です(参照:国税庁)。上限を超えた分は通常の減価償却になるため、複数の資産をまとめて購入する場合は合計額の管理が必要です。
実務で落とし穴になりやすいポイント
「取得日」が4月1日以後かどうかは必ず確認
新しい上限(40万円未満)が使えるのは、あくまで令和8年4月1日以後に取得した資産のみです。3月31日以前に取得した資産は旧来の30万円ルールのままです。3月末から4月頭にかけて設備投資が重なるケースでは、取得日の確認を徹底してください。
少額減価償却 vs 一括償却資産——どちらが本当にお得か
よく質問を受けるのですが、一括償却資産(取得価額20万円未満を3年均等償却)との使い分けは悩ましいところです。一括償却資産は償却資産税(固定資産税)の対象外ですが、少額減価償却資産の特例を使うと課税対象になります。
つまり、取得価額が20万円以上40万円未満の資産については、即時の税負担軽減(法人税減少)と中長期的な固定資産税コストを比べて判断する必要があります。単純に「特例を使った方がいい」とは言い切れないため、顧問先ごとに状況を踏まえてアドバイスすることをお勧めします。
消費税の処理方式で判定額が変わる
税込経理を採用しているなら消費税込みの価額で、税抜経理なら消費税抜きの価額で「40万円未満かどうか」を判定します(参照:国税庁)。消費税処理の方式が変わっているクライアントがいれば、そちらも合わせて確認しておきましょう。
こんな顧問先に積極的に案内したい
今回の改正は、特に以下のような顧問先へのアドバイスに結びつけやすい内容です。
- PCやタブレットを更新予定の企業:最近は30万円台後半の機種も多く、40万円未満の範囲でいい選択肢が増えている
- 医療・介護・物流系で設備投資が見込まれる企業:業務用機器の価格上昇で30万円超えが増えていたカテゴリ
- 年度内に複数の資産購入を検討している企業:年間300万円の上限を見ながら購入計画を立てると節税効果を最大化できる
決算が近い顧問先には、設備投資のタイミングと合わせて早めに伝えておくとよいでしょう。
まとめ
2026年4月1日以後の取得分から、少額減価償却資産の特例の取得価額上限が30万円未満から40万円未満へと拡大されました。シンプルな変更のように見えて、実務では細かい確認ポイントがいくつかあります。
- 上限拡大:30万円未満 → 40万円未満(2026年4月1日以後取得分のみ)
- 従業員要件が厳格化:500人以下 → 400人以下に変更
- 年間300万円の上限は変わらず
- 一括償却資産との比較・償却資産税も踏まえて判断を
顧問先への決算対策・設備投資アドバイスにぜひ活用してください。
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、具体的な税務判断については必ず税理士等の専門家にご相談ください。また、税法は改正される場合があります。最新情報は国税庁等の公式サイトをご確認ください。
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